手仕事で差は生まれると語る
厚田漁港の勝ち狩もん・中井さん。
その手がつむぎ出すのは、
地域と次世代の未来だった。
- 厚田
- 中井 健太
ホタテの養殖は、手仕事の連続だ。
はじめは1cmに満たない
小さいホタテを大きくするために、
細かい網のカゴに入れて海に吊るす。
大きく成長してくると、一旦海から引き上げて、
少し網目の大きいカゴに入れてまた海で育てる。
その繰り返しだ。
作業をするのは、主に深夜。
日が出る前に作業するのは、
暖かい中で入れ替えるとホタテが
弱ってしまうためだ。温暖化により、
海も日々変化をしている。
「機械も使うところあるけど、結局最後は人の手」
海でも、丘でも、作業の機械化と効率化が進む。
だからこそ、人の手で作業するところに、
ホタテの違いが出る。
漁で勝つための工夫を伺うと、
そう答えてくれた中井さん。
持ち前の気合いと根性で、
折れることなく失敗を重ねる。
「失敗しないと、次につながらない。
水温の変化や、海の荒れ具合と、
自然はどうしようもないこともある。
それでも、やれることはやる」
さまざまなトライを繰り返しながら、
他の漁港のやり方も勉強する。
「誰かの真似したくはないけど、
いいところは勉強しなきゃね」
気合いと根性だけ。そう謙遜するが、
当たり前のことをすべてやる姿勢に、
勝ちを狩り獲れる理由がありそうだ。
漁に出る前には、必ず祖父から受け継いだ
置物に手を合わせるそうだ。
何の置物かはわからないというが、
代々受け継がれ、箱もあり、座布団も敷かれている。
「漁がうまくいかなかった日は、
置物に手を合わせていない日だった。
何か力があるんだと思う」
日々相対する気まぐれな海。
苦境に立たされたときや悩んだ時でも、
中井さんはお酒やギャンブルで
ストレス解消はしない。
その分、うまく逃げ道を作るようにすることが、
大切なのだと語る。
「地元を出て就職した子にも、
悩んだり失敗したら自分を追い詰めずに
逃げてこいと伝えてるんです。
悩まず帰ってこい、と」
子どもが大好きな中井さんは、
地域の少年野球のコーチをしている。
体の大きい小さいや、強い弱いが大事ではなく、
とにかく元気で印象に残るように、
と伝えているそうだ。
地元を出てからどこにいても人の前に
堂々と立てるような人に育つように。
どこにいても気持ちで負けないように。
子どもたちの未来を育てるため、
願うようにそう語りかけていた。
鮮度抜群で味の濃い厚田のホタテに、
バターや醤油は不要。
「なにもつけずに食ってみて!」
口がいっぱいになるほどの大きいホタテからは、“海の幸”そのものの旨味が広がる。
春から秋にかけて、水揚げに応じ、
獲れたてのホタテを購入できる朝市も
土日を中心に開催しているそうだ。
※石狩・浜益の朝市でも日によっては取り扱いあり。
石狩は土地に恵まれている。
森と川と海、すべての自然がつながって、
石狩湾の豊かな海の幸が育まれる。
厚田では、先輩がたくさんいて、
年配の方も現役で漁に出ている。
「わからないことは聞く。聞くは一時の恥、
聞かぬは一生の恥だと思っている」
教えを乞い、わからないことは教え合う。
先人の知恵や工夫を受け継ぎ、さらに磨き、
地域の豊かな未来につながることを願っている。